数年前に友人からいただき、途中まで読んだっきりになっていたものを、あらためて最初から読み返した。
中村天風が昭和30年代に行なった講演(作中では「講話」となっている)を、宇野千代が編集したもの。
まず、第一に、内容はともかくとして、講演の内容が文章化されたものだから、基本的に口語。
このため、話が右にそれ左にそれ、文章で読むと頭に内容が入ってきにくい。
徐々に慣れ、後半になってようやく講演を聞いている人の気持ちになって読めるようになってきたが、前半はつらかった。
テーマがテーマだけに宗教的な話も多いが、それでも腑に落ちる点はいくつかあった。
以下、心に留まった箇所。
宇野千代が感銘を受けた点
人間は何事も自分の考えた通りになる。自分の自分に与えた暗示の通りになる。
出来ないと思うものは出来ない。出来ると信念することは、どんなことでも出来る。
本書の中に、そのものの表現は出てこないが、ここに本書のエッセンスが詰まっている。
肉体生命だけでなく精神生命を積極的にしなければならない
人は皆、健康のために○○を食べよう、運動をしようと身体については気を使うが、精神についてはたいして気を使っていないという話で、意識して、精神衛生をプラスにするよう心がけましょうということ。
また、消極的な感情・情念は身体にマイナスに働くと。
消極的な観念とは
・怒ること
・悲観すること
・やたらと理由なくして恐れること
・憎むこと
・恨むこと
・焼きもちを焼くこと
の6つ。
人間は何しにこの世へ生れて来たか
何か人間以外には出来ないことを人間にさせようがために、他の生物には持ち合せない力を与えられており、それは、エレベーション(高める)という、造物主の目的に順応するため。
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寝る時は頭を空っぽに
夜の寝がけは、それがたとえ嘘であってもほうんとうでも、その考えた考え方が無条件に、われわれの潜在意識の中に、すっとはいって来る。……これを心理学では、特別無条件同化暗示感受習性という
”顕在”ではなく”潜在”意識に入ってくるというのがポイントだろう。
横になってものを考えるな
寝ている間は、体は横になっていて、大脳、小脳、延髄、脳髄液も横になっている。その時は、体は休息の状態。だから、考え事は起きてから考えなさいと。
寝る前もそうだが、逆に、目覚めた後にベッドの中でもんもんと考えたことも大して役に立たないのも、同じ理屈かもしれない。とはいえ、「大脳、小脳、延髄、脳髄液」なんて言葉使って真実味がありそうだが、要は感覚的な話なのだろう。
大筋とは関係ないが、
ほんとうに、人間、淋しくなると父親ではなく母親を頼ると。
それは、その通りだなあと共感。
自慢のような話も出て来るため、字面だけで見ると余計だなと思う箇所も多い。
中村天風の人間的魅力が大きそうではあるから、もしあるならば肉声の講演の録音を聞いてみたいものだ。