「なぜ、それを買ってしまうのか」加藤直美著

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なぜ、それを買ってしまうのか 書評 感想

脳科学や心理学の観点から、人が「ものを買う」ことに付随するあれこれを解き明かしていく内容。

今までに読んだ本と重複する内容もあったが、全般的に示唆に富む内容だった。

以下、興味を惹かれた点を列挙。

人は、価値のあるものは高額で、高額なものには価値があると考えがち

だから、あるブランドに愛着を感じている人は、そのブランドの商品が高額なほど自分の選択したブランドの価値が高いと感じて、満足する。

高い価格を支払ったほど、その体験は楽しい(美味しい)ものと感じられる

一般論ではあるが、そういうものなのだろう。
並ばないディズニーランドよりも、並んだディズニーランドのほうが楽しく感じられるということか。

人は手に入れられないものの価値を低く、手に入れたものの価値を、手に入れる前よりも高く見積もることで、心の平安を保っている

手に入れる前よりも高く見積もる」というのは興味深い。
Sour Grapeを実際に食べて本当にSourだった場合も、酸っぱくて美味しいと感じると。

自分の負担が増えるとそれが5%でも損した気分になるが、負担が軽減されるときは同じ5%でも、たった5%と思い、あまり得した気分にならない

得は多くないと得に感じず、損は少しでも損に感じる。
株やFX等で損切りできない典型の心理状態。

我々の損得勘定の体感をグラフに表わすとこのようになる。
sontokukanjou

マイナスの気分割合は、プラスの気分割合の1.5倍から2.5倍くらいになる。
そして、損も得も、金額が大きくなるほど感じ方が小さく緩慢になる。

家具や家電製品だけを買う場合は、いろいろ情報を集めて吟味するのに、住宅を買ったついでに家具や家電製品を買う場合は、住宅を吟味したほどには価格にこだわらず、買った住宅に相応しいとか、自分の好みに合うといった理由で選びがち

これもまたよくある話。
少額の買い物は値段にこだわり、大きい買い物は勢いや雰囲気で買ってしまう。

我々は、最初に買おうと思って目にした価格に、束縛される

例えば、通常価格、メーカー希望小売価格、市価として表示している価格などの話であるが、その傾向はあるだろうとは誰しも思っているだろう。

杭として打たれた最初の価格は、その後に同じ商品や似たような商品を買おうと思うたびに、見えない鎖となって、私たちの決断に影響を及ぼし続ける

我々は杭が打たれ、それに影響されていることに気づかない
最初の価格の影響は絶大で、その後の価格の影響を凌駕すると。

12万円と11.98万円。値下げ交渉がはじまると、12万円のほうが値下げ率が大きくなる傾向がある。これは、われわれが端数に捕らわれるため。半端な価格の場合、端数に気をとられ、杭の近くをうろうろしてしまう。

食品スーパーでの買い物は、1000円、2000円、3000円といったちょっきり価格の前後の買い物客が多い。これはあらかじめ予算を決めて買い物をする客が多いため

なるほど。家計をしっかり守ろうとするとこうなるという話。

 
北カリフォルニアの「Draeger’s MARKET」というスーパーマーケットで、ジャムを試食した顧客に割引クーポンを渡すという特設ブースを作り、ある週末には24種類のジャムを、別の週末には6種類のジャムを並べて、購買行動の反応を調べるという実験が行われた。この通称「ジャム実験」の結果が示唆するものとは。

人は数の多いところに集まるが選ぶことができず、数の少ないところで選ぶ

よく言われることだが、たくさんの選択肢の中から自分で選んでいるという感覚が、たとえ錯覚であったとしても、顧客の満足度を高める。しかし、選択肢が多すぎると選ぶのに労力を使いすぎ、選べなくなる。では、いくつの選択肢が最適なのかというと、心理学者ジョージ・ミラーが提唱するものにマジカルナンバー「7±2」というのがある。つまり、5~9が最適だと。これ以上の情報は記憶に残りにくいという。

短期記憶(約20秒間保持される記憶)は、超短期記憶(感覚器官で保持される一瞬の記憶)から絶えず送られてくる情報の記憶。容量が小さいため情報の多くをとりこぼしてしまう

第三の選択肢の登場が、いままで迷っていた選択に影響を与えることがある

どちらがいいのかと迷うことはストレスになるので、無意識のうちに、迷いからの脱出を求めて新たな比較基準に飛びついてしまうと考えられている。

マツタケや地鶏など、人は結果以上に、手間ひまかけた時間と労力に価値を見出し、お金を支払おうとする

冷凍食品、合わせ調味料、調理済み惣菜などを利用する時短調理。これに対し、7割を超す人が罪悪感ないしうしろめたさを感じている

これも理解できる。結果だけでなくプロセスも重要だという価値観。
同様の話で、レギュラーコーヒーとソリュブルコーヒー(要はインスタント。この呼び方は果たして普及しているのだろうか)は味では遜色ないが、手抜き感がソリュブルの味を下のように思わせている。

実際に金銭の授受が行われていなくても、お金を払う、お金をもらえると思っただけで、価値が変わって感じられる

同じ話をしていても、いつもこの話で講演料をもらっていますと言うか、お金を払うので聞いてくださいと言うかで、話の価値が変わって感じられるという話。

高齢な消費者は、買い物に保守的で、一度いいなと思った商品を買い続ける傾向が強い

あくまでも一般論。年齢よりも個人差が大きそう。
冒険する人、しない人。

日本人は季節感を大事にする。定番商品のほかに季節ごとの限定商品が喜ばれる

ビールがわかりやすいが、言われれば確かにそう。
逆に、他の国ではそんなことはあまりないってことなのだろう。

行動として現れる結果が、意識を原因としていないにもかかわらず、私たちは意識によって自己の行動をコントロールしていると思っている

様々な書籍で書かれていることだが、結局のところ、人は自分の行動の原因・理由がわかってない。
その「わかっていない」ということすら、わかっていない。
そして、自分をコントロールできていないことにストレスを感じると。
衝動買いの後の後悔はこれにあたるという。

脳は、過去に自分がどんな意見を持っていたかを正確に思い出すことができない。直前まで考えていたことでさえ、少しでも新しい意見を取り入れた途端に再現不能になってしまう。無理に思い出そうとしても、現在の意見にすり替わってしまい、多くの場合は、意見を変えたことすら気づかないまま

これは買いものに直接関連する話ではないが、納得。
例えば、安保関連法案に関して、自分が数か月前にどんな意見を持っていたのか、正確には思い出せない。

こうやってブログを書いている今この時でさえ、そのときそのときに頭に浮かんだことを組み合わせて自分の意見を形成しているところは多分にある。


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