買いたがる脳-なぜ、「それ」を選んでしまうのか?/デイビッド・ルイス著

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

thebrainsell

先日読んだ「ついこの店で買ってしまう理由」に続き、心理学・脳科学と買い物の関係性についての書籍。

学んだことは少なくなかった。

以下、備忘録。

・買い物を「する」のは必要性を満たすため、買い物に「行く」のは要望をかなえるため。しかし、「欲しい」という思いが頭から離れなくなると、ほかのことに集中できなくなり、「欲しいし必要」という思いに変容する。

・テーマパークなど、人は楽しく遊んでいるとき、買い物する気分になる傾向が強い

・空港で一人寂しく長い時間を過ごさねばならない時など、商品よりも接客を求めて店に入ることがある

・消費者は毎日約4,000の広告を目にしているが、その多くは個人的な問題に関するもの。すなわちコンプレックス解消系

・メーカーが、価格を変えずに容量を少なくする戦略をとることが増えている。買い慣れた商品の容量は同じはずだという消費者の思い込みに付け込んでいる。消費者は気づいてもすぐに買わなくなったり、商品が嫌いになったりはしないが、次第に不信感や疑念が高まりかねない。

・値段に関して。心理学的には、先頭数字だけに注目しており、残りの数字は見えてない。例えば、998円と1,000円の違い。また、320円から360円に値上げするよりも、390円から410円に値上げする際のほうが客離れが大きいという点。(アンカリングバイアス)

・ゴミ袋、ペット用トイレ、タバコ、生理用ナプキン、おむつなどの日用品は潜在的に「汚らわしいもの」と認識され、近くにある商品の魅力が大幅に低下し、同じ棚にある食料品は売り上げが低下する。

・脳はエネルギーをできるだけ使わないようにするため、さまざまな精神面の防御策を講じる。これにより、見慣れない印象を与えたり、読みにくい字体を使ったりすると、無意識に消費者の評価が下がってしまう。

人はスムーズに理解できれば見慣れた文章だと推論し、よく知っているものは真実だと結びつけるので、スムーズに理解できれば真実だとして肯定的に評価する

説明文に写真が入っていると、脳は素早く情報処理できる。しかも、奇妙なことに、写真が商品や文字情報と無関係であっても、その状況は変わらない

・ある株式に関する研究では、上場から数週間後、発音しにくい銘柄にくらべて発音しやすい銘柄のほうが高く評価されていた。

・記憶とは、正確さに違いはあっても、過去の出来事や感情の記憶と考えがちだが、そうではない。記憶とは過去の出来事の再構築であり、アクセスするたびに構築されていくので、少しずつ変化している

・消費者は購入を決めてから本人の判断を自覚し、その段階で自分自身や周囲に対して購入を正当化しようとするので、購入の本当の理由が歪曲される。

・第二の脳は消化管にあり、考え方や感じ方を大きく左右する。消化管の腸管神経系は、猫の脳とほぼ同数の約1億のニューロンで構成されている。大脳皮質にくらべれば数千分の一にすぎないが、第二の脳と呼ばれる理由がある。たとえば消化管の機能および作用を絶えず自発的に監視し、消化管の動きと酵素の分泌を制御する。そのための30を超える神経伝達物資は、ほぼ中枢神経系と共通している。

・「腕を曲げる行動」は手に入れたいという願望、「腕を伸ばす行動」は拒絶と連動する。したがって、たとえば、スーパーで買い物かごを持っている人(腕を曲げる行動)は、買い物カートを押している人(腕を伸ばす行動)にくらべて購入意欲が高いといえる。

・われわれの体は、必ずどちらかに傾いている。その影響から、無意識に利き手側にプラスイメージを持ち、逆側にマイナスイメージを持つ。

・少なくとも男性は、性的興奮が高まると、性的充足以外の目標を見失ってしまう一種の視野狭窄を起こす。しかも、自分の判断や行動に影響が生じている状態をほとんど感じない傾向がある。
(最近の研究では、女性にも同様の傾向が見られたという発表があった。男女問わず、性的に興奮していると、無意識に、正しい判断をくだせなくなっていることを意識すべし)

・男女を問わず販売員が、女性への接客中に偶然を装って軽く手を触れると、購入に前向きになるだけでなく、店の評価も高くなる。これは、女性客が手を触れられたことを意識していなくても。なおこれはアメリカの事例で、スキンシップが弱めの日本でどうかはわからないとのこと。

・理性的な買い物の判断は主に「大脳皮質」で行なわれている。一方、衝動買いの判断は、大脳皮質と脳幹の間にある「大脳辺縁系」で行なわれる。発生系統的に古い脳内部位であり、感情が生まれるとともに、感覚や筋肉、循環系、消化系、免疫系からのデータを視床と呼ばれる部分で処理する。

・明示的記憶というのは、具体的に説明できる内容であり、なぜ特定のブランドや商品を選んだのかを説明するときに思い出す記憶である。それに対して暗示的記憶は、きわめて変化しやすく曖昧なケースが多い。明示的記憶は信頼できず、時間がたてば変化し、作り話の可能性も高く、記憶の相違をなくして矛盾のない体験談を仕上げるための創作になりがちなこともわかっている。一方、暗示的記憶は潜在的なもので、言葉にはあらわせず、行動への影響として間接的にしか確認できない。スーパーでどのブランドを選ぶか、どのような購買行動をするかを決めるのは、主に暗示的記憶である

・日常の出来事を思いどおりにしたいという根源的欲求は、自覚しているケースは少ないが、消費のあらゆる局面で強く作用する。したがって、店頭でもオンラインでも、買い物の主導権を消費者が握っている、少なくとも消費者がそう感じるようにすることが大事である。

・現金やクレジットカードを持って店にいると、おそらく最高に人生を支配している感覚になる。自分が自由に購入する商品を選択していると感じ、多くが思い込みにすぎないが、何を買うか、どの店に行くか、どのディスプレイを見るか、どれだけの時間をかけるか、いつ帰るか、客観的に判断していると信じている

・消費者の主体性の感覚にダメージを与えるひとつの要因として、ほんのわずかでも必要以上にレジや商品購入に並ばせる行為である。
 (あらかじめ並ぶとわかっていると、むしろその並ぶ行為が買う行為の喜びを増すことにもなるのだろう)

・ディズニーランドでは、各アトラクションに表示されている待ち時間は、意図的に実際よりやや長く設定されている。

多くの人は決まった店で定期的に買い物をするので、ディスプレイの変更や売り場の移動を好まない。購入する商品も決まったものを選び、別の商品に変えるのは強い抵抗感を覚える。

・平均的な消費者は、あまり価格を意識していないが、日常的に購入する商品の価格には詳しく、他店との比較もできる場合が多い。そこで指標となるアイテムの価格を意図的に低く設定し、ほぼ原価あるいは原価以下で販売してアンカリングの役割を持たせ、すべての商品がお値打ち価格であると思わせる。(アンカリングバイアス)

・私たちのような社会的な動物は、物語、なかでも強く感情に訴えるものに対して反応するようにできている。したがって商品の感動的なストーリーを作り上げ、思い出しやすいフレーズにすれば、消費者の心に簡単に届きやすい。

・店舗で高い視覚的効果が期待できるのは「照明」と「色」である。高級感をわかりやすく印象づけるには、明るい照明ではなく落ち着いたものを選ばねばならない。ただし雰囲気は、ナイトクラブ風ではなくゴシック建築の大聖堂に近づける。

・スーパーの照明では、ベーカリーは暖色系、肉売り場は寒色系になっている。

・薄暗い照明の場合、顧客は穏やかな気分になり、ゆっくり時間をかけて店内を歩き、商品をじっくり選ぶようになる。

・青や緑のような寒色は気分をリラックスさせ、オレンジや赤などの長い波長の色は興奮させる。これはネット上でも同じ。

・小売店の内装は、暖色系よりも寒色系のほうが買い物客の評価は高い

・飽和度(強さ)が高い飽和色は楽しい気分になるが、寒色にくらべて恐怖心につながりやすい

・色への反応は主観性が強く、年齢や性別によって感じ方が違う。男性にくらべて女性は色の明るさに敏感で、鮮明な色を見ると興奮し、支配的になる。

・セール広告の色(赤)が男性には影響を与えるが、女性には影響を与えにくい。ただし、男性も内容に注意を払っていると色による違いはなくなる。

・色によって時間経過の感覚も変わる。赤い照明のときは時間経過が遅く、物は大きく重く感じられるが、青い照明のときは時間経過が早く、物は小さく軽く感じられる。

・スローテンポの音楽をかけている百貨店は、アップテンポの音楽の百貨店にくらべて1日の売り上げが38%多いという研究がある。また、ワイン売り場でクラシック音楽をかけると、ヒット曲の場合よりも購入額が増加し、購入本数ではなく購入単価が上昇する。

・ベルギーのハッセルト大学の研究グループによると、チョコレートの香りは書籍販売に効果がある。書店の営業時間にチョコレートの香りを流してみたところ、わずかな香りですぐには気づかない程度だったが、来店客の滞留時間や手に取る冊数、購入冊数も増えた。なかでも食品や飲み物、恋愛小説への効果は大きく、チョコレートの香りがしている時間帯の売り上げは、何と40%も増加した。

・社会的階層が高い子どものほうがブランド意識は強い

・ブランディングの主な要素は、画像、言葉、音楽の3つ。

・共通の反応をする消費者が増えれば、それだけ購入判断への影響力も強くなる。こうした同調心理を「バンドワゴン効果」と呼ぶ。仲間への同調には、何らかの報酬や興奮を感じている。

・画像は、瞬時に多大な情報や感動を表現でき(理解するための精神的労力を20%少なくする)、記憶に残りやすく、思い出しやすい。

・格闘技の試合で、選手の服装の色は審判の判定に影響を及ぼす。青より赤のほうがポイントが高くなる。

・多くの動物の子どもには、頭や目が大きすぎるという共通の特徴があるのは、大人が保護したいと強く感じ、子どもたちが危険な幼児期を無事に過ごせるようにするため。

・マクドナルドの”I’am lovin’ it” 。You’reではなくI’mと言われた消費者は自己暗示にかかり、自分自身にマクドナルドを愛せよという指令を発するようになる

・通常、ブランドのメッセージは具体的ではなく、だれにでもあてはまる内容になっている。そのテクニックは「フォアラー効果」あるいは「バーナム効果」と呼ばれ、占い師の言葉と同様。

・私たちはストーリーを聞くのが好き。商品の詳細な説明文よりも便益の説明のほうが例外なく前向きな反応につながり、購入意欲も高まる。

・メキシコ大学の進化心理学教授ジェフリー・ミラーの言葉。人類は小規模な社会グループのなかで進化してきたので、イメージや地位は生き残るためでなく、異性の関心を集め、友人に強烈な印象を与え、子どもを育てるために何よりも重要だった。私たちが自分自身を財やサービスで飾るのは、ものを所有していることを楽しむというよりは、他者へ印象づけるためである

・私たちは注目しているものだけを意識する傾向がある。

・クレジットカードのマークが目立たないように表示されていると、出費額を増やすプライミングになる

・広告やテレビ番組のなかには、意図的に視聴者が登場人物に対して劣等感を抱いたり、ほかの商品や人物に欠点があるように思わせるものも多い。たとえば、魅力的な女性モデルを起用した香水の広告を見ると、本人の容姿への満足度が低下する。そのようなメディアによって作り上げられる不安感や自身の喪失を利用して、「攻撃と救助」という販売テクニックが用いられて、消費者に辛さを感じさせてから商品購入による救いの手を差し伸べる手法が横行している。

・子ども向けのCM。女児と男児とではアピールの仕方が違う。女児が好きなのは、軽快な音楽、女性の声、パステルカラー、優しい画像、男児が好むのは、大胆な音楽、迫力ある声、強いイメージや色彩。

思春期になると、市場で「クール」とされていることを追うのに、常にプレッシャーを感じているといわれる。多くの若者にとって思春期は、自信が持てず不安な時期であり、なかでも女性はその傾向が強い。

何よりも広告に求められるのは、商品を持っていなければ敗者だと思わせる仕組みである。子どもたちはその作戦に弱い。商品を直接売り込んでも受け入れてもらいにくいが、持っていなければ時代遅れだとアピールすると関心を持ってもらえる。

・ザイアンスの分析によれば、私たちは目にした頻度の高い商品やスタイルに好感を抱き、実際に使った経験の有無はイメージに影響しない。

・視聴者にどれぐらいCMに注意を払っていたか、どれぐらい正確に内容を思い出せるか、どれぐらいの情動を経験したかをインタビューしても意味がない。それは視聴者が答えたがらないからではなく、答えられないからだ。私たちの認知の多くは無意識になされているというのが、認知心理学者の見解である。

・レジ待ち時間の雑誌やチョコレート、キャンディやガムなどの衝動買いは、携帯電話の普及により落ち込んでいる

・「いいね!」をクリックして積極的に本人の特殊な特性を明らかにするユーザーは、かなり少数。同性愛者の結婚式の話題に「いいね!」をクリックした同性愛者のユーザーは、5%にも満たない。

・男性は喫煙によって無意識に自分の支配力や尊大性を感じている。タバコは男性の性的シンボルなので、女性が男性にタバコを勧める広告は、男性顧客の心理に逆効果

 
と、学ぶべきことが非常に多い本だった。
今後仕事や日常で生きていきそうなエッセンスが詰まっており、有益だった。


サブコンテンツ