ナンパを科学する ヒトのふたつの性戦略/坂口菊恵著

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nampawokagaku

この本の著者は進化心理学者で、ヒトの恋愛・性行動にまつわる疑問を進化心理学の立場から解き明かそうとするもの。

著者が日経BPのインタビューで答えているとおり、ポップカルチャーの心理学(ポップサイコロジー)と学問の心理学には乖離があり、この本は学問の心理学をベースとしつつも、読者の興味を引くように頑張っている様が伺える。

 
以下、参考になった点。

「出会い実験」から解明する初対面の男女のコミュニケーション

まずは、密室に何も知らない男女二人を残して去った後の様子を観察する「待合室状況での出会い実験」から。

・女性は非言語的な求愛シグナルを発し、またそれによって心理的影響を受ける。

・女性は相手への関心が高まるにつれてよく動くようになり、好意を示すしぐさを頻繁に示すようになるが、この関係は実験の終わりころに強くあらわれる。

・最初の1分は互いに頻繁に動いて相手との関係性について吟味している状態。後半ではそれぞれのペアの関係の質が行動の同調化によくあらわれる。

女性側の関心は10分間を通じて動きに示されていくのに対し、男性側は相手の評価を素早く下し、関心の高さは最初1分の動きともよく関係する。
(女性のほうが評価を下すのが遅いというのは面白い。この前に読んだ本と併せて考えると、男は本能的に深く考えることなく評価しているのかもしれない。)

・人間行動学的な知見によれば、男女間のアプローチを制御しているのは、当事者同士も気づかないかもしれない微妙な女性の身体的なシグナル(しぐさ)であると予測される。
(女性の仕草がカギを握ると。)

 

どういう女性がナンパや痴漢に合いやすいのか

そして、ここからが、どういう人が「ナンパ」や「痴漢」に合いやすいかをデータを元に解明していく箇所。

・子どもの頃によくナンパにあった女性は、成長してからもよくナンパにあう傾向がある。痴漢も同様。

・ナンパにあった頻度が高い女性は痴漢にあった頻度も高い傾向がある。

・ナンパにあった頻度の高い女性は、道をたずねられる、知らない人から世間話をされるなどの性的でないアプローチもよく受ける。一方、痴漢にあう頻度が高い女性はかならずしもそうではない。

・ナンパや痴漢にあう頻度の高い女性は、互いに関心を持たない男女に見られるような動きのパターンを作るように行動する。

・アプローチにほとんどあったことがない女性を含むペアでは、男性の女性に対する関心と、男性の推定する女性の自分に対する関心の高さは密接に結びついているのに対し、アプローチに頻繁にあう女性を含むペアでは、男性の持つ関心と、男性の予想する女性の関心とは関連を持っていない。

・アプローチにあった頻度は女性の魅力度とも、男性の女性に対する関心の高さとも関連がない。

・アプローチをよく受ける女性は、歩き方がスムーズではなく、ぎこちない傾向がある。また、姿勢の悪い歩行者は、痴漢によくあっている。

・ナンパにあった頻度をもっともよく説明する要因はセルフ・モニタリングの高さ(社会的文脈に応じた感情表出のコントロールが上手い)であり、次に強い要因が歩行者の女性的な印象である。

・痴漢にあった頻度をもっともよく説明する要因は服装や髪型のファッショナブルさ(もしくは身体的な魅力)であり、次に強い要因は動き方のぎこちなさである。

・アメリカの研究によると、短期的配偶戦略の指向性の高さは、性犯罪被害にあうリスクを高めている。

(これらのデータをみると、痴漢に関しては服装や髪型など本人の趣味嗜好が多少なりとも影響していそうだが、ナンパと共通して言えるのは、歩き方や動き方のぎこちなさというのが大きなポイントとなっているという点が興味深い。スタスタ素早く歩いている人には声をかけずらく、ちょっかいを出しずらいということもあるだろうが。)

 
以下、それ以外のこまごまとした参考になった点を列挙。

・短期的配偶戦略への指向性の高さと刺激欲求度の高さは、いずれも生物学的な背景の存在が指摘されている。つまり遺伝の影響が大きい。

・スコットランド人も、日本人も、男女問わず、平均よりも10%~20%前後女性化した男性の顔を好む。
しかし、妊娠可能性が高い時期の女性は、より男性的な顔を好む。女性は生理の周期にともなって、配偶戦略も変化する。

・男女ともに、プレイボーイを敏感に検出する認知メカニズムを備えている。しかし、逆にプレイガールかどうかは、男性のほうが判別しやすい。

・男女ともに、自分が相手に関心を持っていると、相手も自分に関心を持っていてくれると思いこむ傾向がある。女性は男性の自分に対する関心の高さを過小評価する傾向がある。
(男のほうが能天気に前向きと)

・私たちが環境要因を重視して人間の行動の要因を考えたがる理由の1つは、その行動特性は遺伝的な影響を受けていると言われるよりも、人間の努力による修正可能性があると考えて、自分たちを安心させるためではないだろうか。

 
ナンパや痴漢自体への興味はさらさらないが、ヒトが異性をどう見て、どう感じているのかを知ることはやはり面白いテーマだ。


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