【書評・感想】 イシューからはじめよ-知的生産の「シンプルな本質」/安宅和人

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ベストセラーとなっているビジネス書。
研究やコンサルタンティング業務等に直結して役に立ちそうな内容で、自分の業務にドンピシャの内容ではないが、それでもいくつかのエッセンスは参考になった。

以下、記憶に留めておきたい箇所を記す。

考えても答えが出ない「悩む」と、考えれば答えが出るであろう「考える」は違う。悩んでいると気づいたら、すぐに休む。悩んでいる自分を察知できるようになることが大切。

・世の中にある「問題かもしれない」と言われていることのほとんどは、実はビジネスで本当に取り組む必要のある問題ではない。せいぜい2、3%程度。そのうち答えが出せる問題はさらにその半数。

・一心不乱に大量の仕事をすることで、バリューを上げようとしてもムダ。

・徹底してビジネスの対象を意味のあること、つまりは「イシュー度」の高い問題に絞る。次に、絞り込まれたなかで特に「イシュー度」の高い問題から手をつける。この場合、「解きやすさ」「取り組みやすさ」といった要因に惑わされてはならない。あくまで「イシュー度」の高い問題からはじめる。

・イシューを見極めるにあたって、強引にでも前倒しで具体的(これが重要)な仮説をたてることが肝心

・イシューと仮説は言葉として表現することを徹底する。言葉にすることで「最終的に何を言わんとしているのか」をどれだけ落とし込めているかがわかる。言葉にするときに詰まる部分こそイシューとしても詰まっていない部分であり、仮説をもたずに作業を進めようとしている部分なのだ。人間は言葉にしない限り概念をまとめることができない。言葉で明確に表現しないのは、日本人の言語・文化のもつ特性でもあるので、なおさら意図的に訓練する必要がある。

・言葉で表現するときのポイント。「主語と動詞を入れる」「WHYよりWHERE,WHAT,HOW」「比較表現を入れる」

・良いイシューの条件。「本質的な選択肢であること。なんちゃってイシューに惑わされない」「深い仮説がある」「常識を否定する」「答えを出せる」

・脳はコンピュータでいうところの「メモリ」も「ハードディスク」にあたる記憶装置もなく、神経がつながりあうだけのつくりをしている。つまり、神経間の「つながり」が基本的な「理解」の源になる。よって、これまであまり関係していないと思っていた情報の間につながりがあるとなると、私たちの脳は大きなインパクトを感じる。「人が何かを理解する」というのは、「2つ以上の異なる既知の情報に新しいつながりを発見する」ことだと言い換えられる。

・考えるための材料を集めるにあたってのコツ。まずは一次情報に触れること。そして、情報を集めすぎないこと。情報収集の効率は必ずどこかで頭打ちになる。情報があり過ぎて知り過ぎると「自分ならではの視点」がゼロに近づいていく。知識の増大は知恵の増大に必ずしもつながらない。一流の科学者が権威となるようなレベルに到達すると、若かったときのようには強烈なアイデアを生み出せなくなるのも同じ。

・人間は目で考える動物。よって、かたちが見えると急速にその対象について何かがわかったと感じることが多い(論理的に理解していないとしてもそのように知覚する)。実際、我々の脳の後頭葉のほぼすべては「ものを見る」ということに使われているとされ、目でかたちを見ることで急に本質的なポイントが顕在化することがある

・一見、当たり前のことしかイシューの候補として挙がらないときには、「So What?」という仮説的な質問を繰り返すことが効果的。何度も質問を繰り返すことで仮説がどんどん具体的になり、検証すべきイシューが磨かれていく。

・多くの場合、イシューは大きな問いなので、いきなり答えを出すことは難しい。そのため、大元のイシューを「答えを出せるサイズ」にまで分解していく。その際、「ダブりもモレもなく」砕くこと、そして「本質的に意味のある固まりで」砕くことが大切。

・イシューを分解し、そのサブイシューに個々の仮説が見えれば、自分が最終的に何を言わんとするのかが明確になる。次のステップは、分解したイシューに基づいてストーリーラインを組み立てること。

分析とは比較すること。適切な「比較の軸」がカギとなる。定量分析は1.比較、2.構成(全体と部分の比較)、3.変化(時間軸上の比較)、の3つの種類しかない。

脳は「なだらかな違い」を認識することができず、何らかの「異質、あるいは不連続な差分」だけを認識する。脳は「異質な差分」を強調して情報処理するように進化してきており、これは脳における知覚を考える際の根源的な原理のひとつ。分析の設計において、明確な対比で差分を明確にすればするほど脳の認知の度合いは高まる。すなわち、分析の本質が「比較」というよりは、私たちの脳にとって認知を高める方法が「比較」なのだ。

・同じ理由で、同じかたちのグラフやチャートが続くと、2枚目以降に関しては認知する能力が格段に落ちる。

・もっともバリューのあるサブイシューを見極め、そのための分析から行う。粗くてもいいから、本当にそれが検証できるのかについての答えを出してしまう。重要な部分をはじめに検証しておかないと、描いていたストーリーが根底から崩れた場合に手がつけられなくなる。

大切なのは停滞しないこと。停滞を引き起こす要因として、最初に挙げられるのが「丁寧にやり過ぎる」こと。生産性の視点から見ると、丁寧さも過ぎると害となる。数字をこねくり回さず、手早くまとめることが大切。1回ごとの完成度よりも取り組む回数(回転数)を大切にする。

・人がチャートを見て「わかる」「意味がある」と判断するまでの時間は、経験的に長くて15秒、多くの場合は10秒程度。最初のつかみが悪ければ、そのチャートは存在しなかったことと同じになる。1チャート1メッセージを徹底することが大切。この時、何を言うかとともに、何を言わないかも大事となる。

 
個別のノウハウが書かれている書籍ではないが、この方法論をできるだけ実践にうつせるようにしようという著者の意図・意欲が感じられる。


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