【書評】 麻雀放浪記(一)青春編/阿佐田哲也著

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麻雀放浪記

いつ買ったのか不明だが、長年読まないまま一緒に何度も引っ越してきた本。
おそらく学生時代に古本屋で買ったもの。20年経ってようやく読めた。

せいぜい昭和40年代頃の話だと思っていたら、まさか終戦直後の話だとは。
しかし、それはむしろ自分にとっては良い面のほうが多い。
ぼんやりとした時代よりも混乱時の方が自分には合っている。
戦争直後の東京の様子が感じ取られて、ちょっとワクワクした。
街には浮浪者があふれ、外国人が幅を利かせる。

本作に出てくる雀士には、基本的な技術に加えて、積み込みの技術が必須。
プロ同士の戦いは、積み込み合戦。心理戦も大きい。
基本的に二人ペアで行なう今でいうならばイカサマ麻雀。
天和や大四嬉など大きな手をいかに作るかが腕の見せ所。

毎日積み込みのための基本練習は怠らないというのはイメージと違ったが、確かに積み込みの腕が落ちたら食っていけない世界だから当然といえば当然の話。

女性もかかわってくる。時代を感じさせる男女関係。
セックス描写はほぼ皆無。時代なのか。

吉原で働く女性を見つけて口説き落とし仲介する女衒(ぜげん)という職業について初めて知った。

名作として名高い本作。
自分が読んだのは第1巻に過ぎないが、それでも熱いものは伝わってきた。
すぐには続きは読まないとは思うが、いずれ読んでみてもいいかなと思える作品。

以下、心に留まった表現、目に留まった箇所。

オープニング。チンチロ部落で初勝負、その後ドサ健と御徒町のかに屋へ。

お前も呑むか
いいや。でも注いでやる

裕福な奴ほうが勝負できるから有利だと思っていたが、それは素人の話なのしれない。

銭のある奴とない奴がやったら、必ずない方が勝つ。銭のある方はその分だけ遊ぶ心が交じるからである。ポーカーやサイコロのように最初に金を張り、金の圧力がものをいう博打は別だが、銭あと出しの麻雀などはこの法則がきちんとあてはまる。

銀座のオックスクラブのママからイカサマの必要性について。

インチキなんかしなくたって負けやァしない
誰が、自分がアガるためにイカサマをさるといった? あんまり負けすぎるお客がいたら、お客のほうにいい手を入れなくちゃならないわ

ホントのプロは相手のレベルに合わせてギリギリで勝つと。それでも運が悪すぎるお客にはわざと多少は勝ってもらって気持ち良く帰ってもらうことが、商売としては大事。

出目徳から指南された、サイで好きな目を出すためのコツの話。

サイの目はウラとオモテで計7になるように目が出来ている。だから一を起点にすれば、1265と1364の二本の線がある。

7は一番簡単、4と3、1と6、2と5はどの数字を起点にしても、いつも同じ線上にあるんだ。だから二つのサイコロを、同じラインに転がるように揃えて持ち、ひとつのラインだけが出るように転がせば、それだけで6、7割まで7が出る。

2,4,6,7,8の数ならば二つのサイを同じラインに揃えた方がいい。3,5,9,10,11の数ならちがうラインの組合せが出やすい。たとえばピンとピンを出そうと思ったら、二つの目を揃えて握る。そして適当な廻転をさせればよい。そこから先は訓練さ。

これがホントのリーチの登場理由かはよくわからないが。

積み込んでる奴にとっちゃ、ポンやチーがあったんじゃ拙いんだ。だからポンやチーをなるべくさせねえように教えこまなくちゃならなえんだ。

それが、例の、リーチって奴か

ああ、面前役の魅力をつけさせなきゃ、奴等はいくらいってもポンチーをする。リーチを流行らせることに今、懸命だよ。


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