「買いたい!」のスイッチを押す方法/小阪裕司著

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ここ最近、人にどうやってモノを買ってもらうかについて考えていたところ、渡りに船のタイミングでこの本を知人からいただいた。

この本の伝えたいことはシンプル。
それを表現を変えたり、時々具体例を出しながら説明している。腑に落ちる内容。
ただ、他のビジネス書同様、それを実践することが難しい。

少しでも記憶に残すために、以下、なるほどと思った点などをメモ。

脳は景気に関係なく、モノやサービスを買いたくなったり、ならなかったりする。そう、脳は不況を知らないのである。

だから、モノが売れない理由を景気(だけ)に求めてはいけないということ。

「買う」までにある二つのハードル

著者は、人が「買う」までには二つのハードルがある、と言う。

一つ目は「買いたい」か「買いたくない」か。
もう一つは、「買える」か「買えない」かのハードル。

不況は二つ目のハードルを高くする。

しかし、二つ目のハードルは比較的低い存在。
なぜならば、それは「理性」だから。

一方、一つ目のハードルは二つ目のハードルよりずっと高く、しかし、越えてさえくれれば決定的かつ強力に行動へと向かわせる力となる。
それは、「情動」だから。

新しく驚きのある情報が脳内のドーパミンを増やす

本書には、ところどころ脳科学者であるグレゴリー・バーンズ博士の言葉が引用されている。

新しい情報に反応してドーパミンが出されることが、強烈な満足感の核心であり、それが動機のシステムをスタートさせる

私たちの発見は、人の線条体、そしておそらくドーパミン・システムは、新しくて予測できない報酬にもっとも反応することを意味していた。

動機が起こるカギは「情報」が握っており、脳の中に流れるドーパミンを増やすためには、その情報が「新しく」、「驚き」があるということがポイントとなっている。

人が買うのは「未来の自分」

筆者は言う。人の脳はモノやサービスを欲しているわけではない。
モノやサービスを得た”先にあるもの”を欲しているのだと。

”先にあるもの”とは、例えば、そのモノやサービスを手にすることで、幸せなひとときを手に入れ、そこで感じる「人生っていいものだ」という満足案、充足感、自分の人生に対する肯定感のようなもの。

自分の好ましい未来につながった瞬間に、買いたいモノやサービスとなる。

消費者が求めてやまないもの、それは「未来の私」なのである

イケてる服を着て、女性から注目を集めて幸せな「未来の私」。
流行のもの(流行りのスイーツや、映画、テーマパークetc)を手に入れ(もしくは体験して)、誰かに自慢したり、誰かと共有している「未来の私」。
どんな「未来の私」を望むかは、人それぞれ。

だから売る側は、未来を売る行為の中にモノやサービスを埋め込み、自分なりにシナリオを示すことでお客さんを買う気にさせていくのだ。
言い換えれば、お客さんの未来の消費行動を計画することが大事。

この時、過去の購買行動を分析するだけでは必ずしも未来の消費行動は計画できないことに注意が必要。
消費者の暗黙の期待に応えてこそ、感性に強く働きかけることができる。

 
ここで、売れない椅子を売った話が例としてあげられている。
DMに書いたキャッチが

いやぁ~、もう、読書するならこの椅子やと思いましたネ!

そして、本文には椅子の話ではなく、読書の話が続く。
「快適なイスに座っている未来の私」ではなく「大好きな読書にどっぷり浸れるイスに座って読書をしている未来の私」というシナリオのほうが当然刺さる。

購入にいたるまでのキーとなる行動を見つけ出す

続いて、行動を分解して考えるという話。

商品が売れない、あるいはリピートしてくれないというのは、どこかでお客さんの行動が止まってしまっているということ。
消費者の一連の購買行動を、ひとつひとつ分解して見ることができるようになることが重要。

お客さんにしてもらいたい行動を分解して考えたら、次にその行動の流れを考え、目に見えるようにする。
これを「行動モデル」と言う。
この”行動”のなかには「購入を検討する」「購入を決意する」など、頭の中で行なわれていることもある。それらもひっくるめて行動モデルを作っていく。
こういった取組みを「購買行動デザイン」と呼んでいる。

一連の行動モデルのなかには、消費者が必ずそうするとは限らない行動がある。
ここが重要。

お客さんにまかせておくと、してくれない可能性の高い行動--この行動に対しては、こちらが意識的に、計画的に働きかけて、動機づけを行わなければならないのである。
この「動機づけをしなければならない行動」が「買う」に至るカギ。
こういう行動を「キー・ビヘイビア」と呼ぶ。これを見つけ出すことが重要。

「キー・ビヘイビア」を見極めることができたら、次はその行動を動機づけすることになる。
人を動機づけるカギは、人の感性に影響を与えることのできる情報、「感性情報」が握っている。

以下が、本書が示す、実践メソッドのフレームワークの図。

marketing

そして、以下が、「感性情報×購買行動モデル」である。

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売れないときは、「感性情報×購買行動モデル」のどの部分に問題が生じているのか、その原因は何なのかと常に問わなくてはならない。

本書のエッセンスを実践するうえで

上記のような考え方を理解した上で、過去の成功事例・失敗事例を見ると、今までとは違った「視点」で事例を見ることができる。
過去の事例から学ぶときは、「視点」が重要。
筆者は言う。人は視点を持ったものしか見えないと。

また、筆者が強調する点で自分も納得したものに以下がある。

五感を通じた現実体験から得られる情報量は、そうでないもの(たとえば事例の本を読む、セミナーに参加するなど)に比べて、けた違いに多い。体験に如くものはない

そして、自分が体験したこととそこからの気づきを、誰かに説明するように記録しておくといい。これは「外化」といって、直観回路(「直感」ではなく「直観」。膨大な選択肢の中から最善の一手を選び出す脳の仕組み)のトレーニングに大いに役立つ。また、このアウトプットをしている最中に新たな気づきが得られる。自分がやってきたことでも、人は案外気づいていないことがある。

お客さんに共感するもっとも有効かつシンプルな方法は、直接お客さんに会うこと。
ここでも、五感を通じた現実体験の貴重さが強調されている。

最後に。

重要なことは、考える総量。
考える総量が、相手を啓発する力を左右する。

人が人を魅了する - そして動機づける - 力の源は、人が誰しも持つ、相手を喜ばせようとするときに発揮される、人の”創造性”である。

これは仕事でというよりも、プライベートでよく実感する話で、確かにそうだなと思う。
誰かを喜ばせようと考えて考えると、自然と良いアイデアが浮かび、工夫を重ねていくうちに良い結果につながるもの。
これは、ビジネスでも生かせる手法である。
あとは、ビジネス相手や、コンシューマーに対して、”喜ばせよう”と思えるかどうかだろう。


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