【書評・感想】 男はなぜ急に女にフラれるのか?/姫野友美

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男女の考え方、感じ方の違いを、脳科学にも関連付けて解説している作品。

念のため言っておくと、なぜ男が女に急にフラれるのかにフィーチャーして書かれているわけではない。むしろ、この点よりも興味深い男女の脳の違いについて触れられている点は多い。このタイトルになったのは、商業的見地からだろう。

男は解決脳、女は共感脳

男の思考回路は、何らかのトラブルが生じた際、ではスケジュールをどう変更してそのトラブルを解決しようかと動く。いわば解決脳である。

一方、女の思考回路は、トラブルが生じた際、そのトラブルの渦中にある人のを気遣い、同情し、何か自分にできることはないかと心配する。他者と共感することを最優先とする、共感脳だという。

たとえ本心はそう思っていなくとも、そうした共感のエールを交わすのが当たり前のこととして脳にインプットされている

女にとっては、問題の解決策を探すことよりも、まずは気持ちに焦点を当てて共感してもらうことのほうがずっと大切だと。

男は解決脳だというのはよく理解できる。
その人への共感よりも、解決するには何をすべきかをまず考えてしまう。

 

不快な感情を貯め込みやすい女性

カップルの間で何かしらの感情のトラブルが生じたとき、男はその場しのぎでトラブルから逃れようとするが、女はそのトラブルを不快な記憶として溜め込んでしまう傾向が強い。男のほうは1度やり過ごしてしまえば、そのトラブルの原因が何だったかなんてすぐに忘れてしまう。だが、女のほうはそのことを忘れない。

これは、男女の脳内での感情の処理のされ方が異なるからだと言われている。

ハーヴァードのデボラ・ユルグルン・トッドのグループの研究によると、男は脳の中心部の扁桃体という器官で感情を処理し、女は外側の大脳皮質の前頭葉で感情を処理しているという。

扁桃体は大脳辺縁系にあり、好き・嫌い、快・不快、怒り・悲しみなどの情動反応を処理する器官として知られている。中でも不快、不安、悲しみなどのネガティブな感情に反応しやすい特徴を持っている。子供の頃は男女ともにこの扁桃体で感情を捉えている。程度による違いはあるが、時間が経てば、ネガティブな感情を忘れてしまうことが多い。短期記憶は扁桃体で処理される。

ポイントとなるのは、女は年齢とともに、不快な感情を捉える場所が扁桃体から大脳皮質の前頭前野へと移動するということ。大脳皮質は理性、分別、知性、言語といった高度な脳活動を司っている。ここでネガティブな感情を捉えるようになると、自分がなぜ悲しいのか、なぜ不安なのかといったことを繰り返し考えるようになる。だから、年齢とともに、女の子は自分の気持ちを持て余し、何かと扱いづらくなる。そして、そうした自分の感情を言葉で説明しようとするようになる。女脳はもともと優れた言語能力を備えている。その能力を駆使して、自分の抱いている感情を何とか他者にわかってもらおうと躍起になる。また、大脳皮質は記憶の貯蔵庫でもあり、しかも長期記憶である。

なぜ女性は、不快な感情を長期記憶として蓄え込むようにできているのだろうかという点については、著者は以下のように述べている。

それは多分、自分の安全を守るためだと思う。一般的に腕力で相手を倒すことのできない女にとっては、ディフェンスの方がオフェンスよりも重要な要素を持つのである。

つまり、過去のマイナスな要素を忘れずに、気軽に気を許すなという脳からの信号だと。

女と違って男は、大人になっても「自分がなぜ悲しいのか」「自分がなぜ不安なのか」といった気持ちを自己表現することが苦手。他人の感情はもちろん、自分の中のネガティブな感情までも、深く詮索することなく「まあ、大丈夫だろう」というくらいの感覚で素通りさせてしまう嫌いがある。

 

男女の性に関する脳内の情報処理の違い

基本的に、性に関する脳内の情報処理は2段階構造によって成り立っている。

1段階目は視床下部。視床下部は生命維持や本能に関する処理を行っているところ。本能情動としての性欲はここの性中枢によってコントロールされている。

2段階目は大脳皮質。大脳皮質は、知性や理性、感情を司る脳。人間らしい活動の拠点となる「新しい脳」だ。オーガズムの快感や性的充足感を受け取っているのは、大脳の前頭葉であり、セックスをするかしないか、どうすれば快感を得られるかといった判断もここで行なわれている。

このふたつの段階が、互いに連携しながら一体となって性的欲求をよりスムーズに処理するように動いている。
この基本構造は男女ともに同じ。問題は、どちらによりウエイトを置いているか。

視床下部段階、すなわち本能にウエイトを置いているのは男。性中枢は視床下部の「内側視索前野」というところにあり、ここには各種ホルモンの受容体が多い。そして、この性中枢、男は女の2倍以上の大きさがある。しかも、「したい」という欲求をつくり出すホルモンのテストステロンは男が10~20倍も多いとされている。

このため男は、彼女や妻と歩いているときでも、つい他の女を目で追ってしまうのである。それは男脳にしてみれば、ごくごく自然な探索行動である。それは大脳皮質で意識しているのではなく、視床下部レベルで無意識のうちに行なわれていることなのだから。

一方、女は大脳皮質段階にウエイトを置いている。また、男と違って、性中枢に隣接する「腹内側核」という場所が性欲に大きく関与している。ちなみにこの腹内側核は満腹中枢のことであり、女は食欲と性欲がリンクしやすく、満腹時に性欲を高めやすい傾向がある。

女の脳は男に比べ本能的欲望を高めにくく、本能に突き動かされるよりも、まずその情報を大脳皮質へ送り、じっくりと分析することを選ぶのである。

 
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以下、細かくなるが、上記以外で印象に残った点を列挙。

・不安を緩和するセロトニンの分泌量が、女は男より少ない。

・女は男が想像するようなビッグな幸せを実は好まない。女はあまりビッグな幸せがあると、それと同じくらいビッグな不幸があるのではないかと不安になる生き物。女は小さな幸せが好き。これくらいの幸せなら、誰も怒らないよね、と安心できる。小さな幸せがたくさんあるのが好きなのだ。要は共感脳。

・女にとってメールは「会話」。だから相手からの返事がないと無視されたような気分になる。男にとってはメールはあくまでもメール、つまり「手紙」。だから返事は出来るときにする。

・女の脳はいくつものことを同時進行で並列に作業することが得意。仕事中にも彼氏の存在を忘れず、思い出してはメールを打つことができる。一方、男はいざ仕事となったら仕事に集中し、彼女のことは思い出さない。

・女は生理が始まって以来、約40年間、毎月1回その肉体の一部が破壊される。だから自分に自信がない。一定でない体と心を抱えて何とか日常を正常にこなすことにエレルギーの大半を費やしてしまう。今日元気でいても、明日元気でいられるという保証はどこにもない。ゆえに、近視眼的なものの見方もする。

・女の脳は会話によって快感を得られるようにできている。また、女脳は脳梁という左右の脳をつなぐ連絡通路が男に比べて太い。そのため、左右両方の脳を使ってより多くの情報を流通させることができ、たくさんの言葉を扱うことができるのではないかといわれている。グチを言うことは、おしゃべり機能の発達した女脳にとっては健全なストレス解消法である。

・恋人の浮気を知ってしまったとき、以下のAとBのうち、どちらに大きいショックを受けるか。
A.恋人が別の人に強く心をひかれ、互いに信頼し合い、秘密を共有していたことを知ったとき
B.恋人が別の人と情熱的なセックスを楽しみ、さまざまな体位を試していることを知ったとき
女性はA、男性はBと答えるのが大多数。

これは、男が種をまき女に子どもを産ませるのが本能(つまり恋人の体が奪われることが問題)なのに対し、女は今後も一緒に子どもを育ててくれる男を求める本能(つまり恋人の気持ちが奪われ、いなくなってしまうのが問題)なことに起因するとされている。

・男も女も、「美しさ」は性ホルモンが分泌されて生殖能力が高いことを意味する。それゆえ「美しさ」に惹かれるのは本能的だと。

・女は男から「助けられる」ということに、たいへん特別な価値を見出している。助けられるヒロインでありたいという潜在願望がある。逆に男は、「困難に立ち向かう英雄」でありたがり、自分が助けた女を好きになる傾向がある(例:電車男)。

・女は周りの評価を過敏に気にする。とりわけ、「美しいかどうか」という評価は、女にとって自分の存在価値を左右するくらい重要なこと。それは何も突出した美しさを求めているわけではない。あくまで「みんな」と同じレベルで微妙な優劣を競い合っていることが大切なのだ。狩猟採集時代の昔から、女の群れの中では「横並び」が原則で、極端に美しすぎたり極端にみすぼらしかったりするのは嫌われるもとになる。

・男性の網膜にはM細胞が多く、女性の網膜にはP細胞が多く分布している。M細胞が最も感知するのは「位置、方向、速度」、P細胞は「色と質感」。

・男性脳は、いわば「閉じた脳」。外から干渉されるのが好きではない。自分だけの小宇宙を持っている。外からストレスなどの強い圧力がかかると、得てして自分だけの居心地のいい世界に逃げようとする。一方、女性脳は、「開いた脳」。みんなからいつも愛されていたい。いつも他人の輪の中にいてコミュニケーションをとっていたい。他に向かって開かれた脳。人間関係がうまくいかなかったり、愛が得られなかったりすると、コミュニケーションの回復を求めて、わざと他人に心配をかけて気を引こうとする。

・女の方がストレスに対する感受性が低い。女は生きるためには何でもする。男はプライドが捨てられない。プライドが打ちのめされ、命を捨てる人も女より多い。女はプライドを捨て、命は捨てない。

・男は、自分の気持ちを話すことが自分の弱点を見せることだと思っている人が多い。

・通常、視覚情報や聴覚情報は、ほんの数秒で消滅してしまう。1回見たテレビのCMはすぐに忘れてしまう。しかし、これが興味あることだったり、必要だと思うと短期記憶として、扁桃体に伝達される。しかし、これも1分程度。ところが印象があまりに強かったり、きちんと理解したことは中期記憶として海馬に最大1ヶ月保存される。この間に不用なものと忘れてはいけない大切なもの(もしくは反復してアクセスされるもの)とが選別され、後者は側頭葉に送られて長期記憶となる。この側頭葉に蓄えられた記憶は前頭葉の指令によって取り出される。
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軽いタッチのタイトルにかかわらず、内容はなかなか興味深い点が多い本で有益だった。


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