【書評・感想】 旅好き、もの好き、暮らし好き/津田晴美

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スタイリストを生業とする著者による、旅に関するエッセイ。

著者の職業柄ということもあってか、ライフスタイルがスタイリッシュで、自分自身と感覚が離れている部分が多い点、そして、決して物書きのプロではなく、文章自体の味わいは多くは期待しづらい点から、多くの章はさっと読み飛ばしてしまった。

とはいえ、その中で参考になる点、気づかされた点もあったのでメモ。

毎日の生活を、そして家を、楽しむということについて。

生活すること自体はどこに暮らしていても日常的なことの繰り返しだけれど、想像力によって暮らしはもっと新鮮なものになる。

セブン・ゲーツ・ファームの二人の男(おそらく、「Country Living Seasons at Seven Gates Farm」の著者である、James Cramer と Dean Johnson)曰く

季節ごとの移り変わりを少しずつ楽しみながら家を飾ってゆくことがあなた自身の家をつくるということなのだ

自分を顧みると、楽しもうとする姿勢が足りていないことを痛感。
季節の移り変わり。。。意識してみたい。

 
フランスメーカー「GAZ」の携帯用ガスコンロの有用性について。

旅行者の間では水あたりや食あたりは日常茶飯事。そんな環境では、自分たちで熱を通して料理を作る安心感は何ものにも代え難い。

最新の薬より、病院より頼りになるの手のひらに載ってしまう小さなコンロ。毎日口にするものを生み出す自分専用のキッチンが、身体を病気から守る基本であり、歓びの源だと信じているのはこのときの体験からだ。

今、日本のアウトドアで見かけるバーナーといえば、PRIMUSのこれが多い。
primus-burner

「GAZ」を調べてみると、正式には「Campingaz」で、世界でのシェアは高いが、現在は日本でガスカートリッジを購入するのが難しくなっているとのこと。
Amazonでは比較的安く買える!

gaz

この、水色のカートリッジがなかなか可愛くて、惜しい。

いずれにしても、海外にガスコンロを持っていくのは悪くないなと思った次第。
というのも、私も旅の途中にお腹を壊すのは日常茶飯事だったから。

 
アフガニスタンで会ったフランス人の老夫婦について。

ランド・クルーザーの運転席の後部に金網を張って、そこにゴールデン・レトリーバーを乗せて、陸路で旅をしてこられた。
車のなかには簡易ベッドと折りたたみの簡素な椅子とテーブル、そして犬のベッドと食料が少し。安全な場所ではキャンプをして、大きな街では骨休めにホテルに泊まるという。
彼らは、フランス人だから当然フランス製のGAZを使って毎日料理をするのだと自慢しながら、鶏のマークの付いたフランス製のホーローの鍋とフライパンも見せてくれた。実用的で美しい食卓と台所用品はフランス文化のほこりだから、と語る。

車のゲートを開けて布で覆って日よけを作り、寝ている犬のとなりに折りたたみの椅子を広げて、静かに座ってコーヒーをたてるあの老夫婦の風景には、年を重ねないと醸し出せない優雅さがあった。

老夫婦が四駆で犬と一緒に旅をする。
アメリカの知人夫妻が、リタイア後に、キャンピングカーでアメリカを旅しながら暮らしていたことを思い出した。
悪くない。今の歳になるとそう思える。

 
天国のようなリゾート地について。

タイのプーケット島の丘陵に這うようにひっそりとその場所はあった。一部屋ずつ、というより一軒にひとつずつサーラと呼ばれる東屋がついていて、部屋はどこからも見えないように椰子の群れのなかに配置されている。

ここでの二週間は、憂世離れした体験だった。野生の蘭の花とブーゲンビレアが咲き乱れる色彩のなかで眠り、軒下までやってくる鳥のさえずりで目が覚めて、朝はまず冷たいシャワーを浴びてから丘陵づたいに降りてゆく。

プールサイドで、パンケーキと、トロピカル・フルーツ・ジュースの朝食をとり、プールでゆっくりひと泳ぎする。しばらく、水に浮かんだり、デッキ・チェアに寝そべって本を読んだりして、飽きると自分の部屋へ帰る。
そのあいだにベッドは美しく整えられて、部屋じゅうに新しい果物の香りが立ち込めている。

アンダマン海に沈む素晴らしい夕陽を眺めるために、毎夕浜辺にずっといる。プールサイドでは夕べの胡弓の演奏が始まり、それを囲むレストランのテーブルにはキャンドルが灯されて食事の準備が始まる。

蝋燭の明かりと胡弓のゆるやかな調べのなかで、おしゃべりしながら三時間くらい、ゆっくりゆっくりタイ料理を堪能する。
食後はみんなすぐには部屋へ戻らずに、プールサイドでデッキ・チェアに寝そべって星を見ながら、あるいは浜辺に続く階段に座って、あくびが出るまで食後酒とともに涼む。

贅沢。ずばりこのリゾート地じゃなくて構わないから、いつか同じ類のところに行ってみたい。
いつか…

 
とっておきの入浴方法について。

徹夜続きの仕事を終えてひと段落したら、まず眠り続ける。ひたすら眠る。そうやって体力の回復を待って、愉しみとしての入浴をする。
まだ明るいうちが気分がいい。真っ白の大きなバスタブに脚を伸ばしてぬるめの湯を蛇口から出す。その垂れる真下た爪先を当てて、足の指をぐっと開いて伸ばす。そのうちにひたひたとぬくもりが胸元へ近づいてきたあたりで湯を止める。
やがて、こわばった神経は解き放たれ、縮んだ筋肉や関節をほぐすように伸びをする。ただひたすらに軽くなってゆく体を水に浮かべて、透明な水の優しい力を感じとる。身体から余計なものがすべて水のなかに溶け出してゆくのを思う。
最後には頭を湯のなかに沈めてみる。

ゆっくりとバスタブから出たら、乾いたタオルの新しい感触を楽しむ。

これも、日常を楽しむことの延長戦にありそう。
疲れをとるために、入浴剤を入れて長く入浴することはあるが、昼間から、しかもお湯を浴びながら入るというのは試したことがない。これは試さねば。

 
麻のリネンについて。

最初はしゃきしゃきして、夏の寝苦しい日々にはその涼しげな感触に「麻は夏に最適」と信じる。使い込んでゆくうちにとろりとほぐれて柔らかく包み込むような保温性に富みはじまるころ、「冬にも麻は快適」と発見する。さらに使い込むと白さにニュアンスが含まれ、「亜麻布の古くなってますます美しい白」を実感するようになる。
そして夜ごと、二枚のシーツの間に滑り込むときの、麻独特の心地よい布の重み。布と肌の間になま温かい空気の層をはらんで寄り添うような感触。朝の光のなかで見る幾層もの白いリネンの海。

麻か。ちょっと惹かれる。
とにかく、筆者は家具を揃える前に、まずはお気に入りのリネンを見つけて買いなさいと言う。

 
沢野ひとし氏による解説から。

私がおしゃれな人とそうでない人の区別をどこで分けるかを判断する基準は靴を休ませる「シューキーパー」を持っているかいないかにかかっている。

そして、津田女史は、旅のトランクの中にまでシューキーパーを持参していると。
シューキーパーか。これまた惹かれる。
シューキーパーが必要な靴なんてほとんど履かないんだけれど。

と、振り返ってみると、意外と心にひっかかるポイントが多く、良い本との出会いだったことを実感した。


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